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純粋想起・助成想起の違いとは|ブランド認知を測る上で重要な指標を解説

デジタルマーケティング
2023.05.23

ブランド認知調査などを行う際に知っておくべき用語として「純粋想起」「助成想起」が挙げられます。

純粋想起や助成想起は、それぞれ「ブランド再生」「ブランド再認」と呼ばれ、回答者の記憶に残るブランド名を分析する手法です。

例えば、純粋想起であれば高級品、助成想起であれば日用品などの調査に活用し、自社ブランドの認知度を把握できます。

「高級時計と言えば?」は純粋想起を調査する質問ですし、「以下の選択肢から知っている高級時計メーカーを選択してください」は助成想起を調査する質問になります。

純粋想起と助成想起を事前に理解をしておくことで、自社のブランドに最適な調査を行うことが可能です。

本記事では、純粋想起や助成想起の意味やそれぞれの違い、ブランド認知を測る上で重要な理由、活用例などについて解説します。

1. 純粋想起とは

純粋想起とは、回答者が記憶しているブランド名を調査する方法の一つです。

ブランドが回答者の強い記憶として残っているかを把握でき、値段の高い高級品などの調査に適しています。下記で具体的に見ていきます。

1-1. 回答者が真っ先に想起するブランド名を調査できる

純粋想起は一切のヒントを与えず、回答者が思い出すブランド名を調査する方法です。

例えば「パソコンと言えば何を頭に思い浮かべますか?」と質問した場合は、純粋想起による調査方法です。質問例としては以下のような形となるでしょう。

Q.パソコンメーカーを思いつく限りご記入ください。
(                             )

回答者は、強く記憶しているブランド名から記入します。

選択肢を提示しないため、回答者に自社のブランド名を真っ先に想起してもらえているか、想起してもらえていないなら、現状どのブランドが想起されるのかを調べることができます。

他にも、例えばキャリア回線における認知度調査において、第一にドコモを回答した場合は、回答者にとってドコモが一番印象に残っているキャリア回線であることが分かります。

また、以下のような調査方法も可能です。

Qご存じのキャリア回線を、上から順番にご記入ください。

ドコモ
au
ソフトバンク
(回答者が記入後の状態)

純粋想起で第一に思い浮かべたものは、第一想起と言われます。
二番目は第二想起、三番目は第三想起になり、徐々に認知度が低くなります。

なお、以下の質問のように第一想起のみを調査することも可能です。

Q1.パソコンと聞いて思い浮かぶメーカーはどこですか?
(                             )
Q2.高級腕時計と聞いて思い浮かぶメーカーはどこですか?
(                             )

Yahoo!JAPANの認知度調査によると、第一に想起されるブランドは、ブランド・サービスの検討者数も増加する傾向にあります。

その調査結果によると、商品やサービスの検討指標は第一想起率の約3倍でした。第一想起率の高さが、商品ブランドの検討者数の多さに繋がっていることを意味しています。

ただ、購買者が比較検討をしていても、商品力が弱ければ最終的に選ばれない可能性があります。

その点で、第一想起率が高い商品ブランドが必ずコンバージョンにつながるとは限らない点に注意しましょう。

参考:よく分かる「第一想起」〜 Yahoo! JAPAN第一想起分析

1-2. 値段の高い高級品においてブランドが浸透しているかを調査できる

純粋想起は、高級品などにおいて自社ブランドが消費者に浸透しているかを調査できる手法です。

消費者に純粋想起されるブランドは強いこだわりや良いイメージを持たれていることが多く、購買につながりやすくなります。

例えば、車やパソコンなどの値段の高いものに関して、消費者は純粋想起されやすい有名ブランドの商品を購入する傾向にあるでしょう。

値段の高い高級品などを扱う企業は、純粋想起を調査することで、自社商品のブランドが浸透しているかを調べることができるのです。

2. 助成想起とは

助成想起はブランド名やそのヒントを複数提示した上で、ブランド名を認知しているかを確認できる方法で、値段の安い日用品などの認知度を確認するのに適しています。

2-1. ブランド名の候補を挙げて認知度を調査できる

助成想起では、例えば以下の設問のように、いくつか商品名を列挙します。

Q.以下の中から知っているスナック菓子のメーカーをお選びください。

カルビー
森永製菓
江崎グリコ
明治ホールディングス
ブルボン

回答者に複数の商品名を提示することで、自社ブランドの認知度合いを把握できます。

2-2. 回答順位から、認知度が細かく分かる

助成想起は複数の商品名やブランド名を用意し、競合他社と比較しつつ、自社の認知度を把握できる調査方法です。

以下において、カルビーが第1位、森永製菓が第2位に選ばれたと仮定しましょう。

Q.以下の中から馴染みのあるスナック菓子メーカー順に番号をつけてください。

カルビー…1
森永製菓…2
江崎グリコ…3
明治ホールディングス…4
ブルボン…5

カルビーは森永製菓より先に選ばれたため、選択肢の中で最も記憶に残っているメーカーと言えるでしょう。

助成想起の回答順位によって、詳細な認知度が把握できます。

2-3. 日用品の認知度を調査できる

助成想起は、お菓子やジュースなど値段の安い日用品などの認知度を調査できる方法です。

日用品は高級品のようなこだわりが生まれにくいため、助成想起による相対的な認知度を調べるのに適しています。

3. 純粋想起と助成想起の違い

純粋想起と助成想起の調査方法によって、以下の2点が異なります。

● ブランド調査の回答方法
● 認知度合いの高さ

「純粋想起は自由回答型」「助成想起は提示型」など、ブランド調査によって回答方法が異なります。

また、純粋想起では、選択肢なしで回答者の頭の中から出てくる回答になるため、助成想起より認知度の高さを知れる調査方法です。

3-1. ブランド調査の回答方法が違う

純粋想起は選択肢がない形式で、自由回答型のアンケートから調査する方法です。以下が例になります。

Q1.パソコンメーカーを思いつく限りご記入ください。
(                             )
Q2.パソコンと聞いて思い浮かぶメーカーはどこですか?
(                             )
Q3.高級腕時計と聞いて思い浮かぶメーカーはどこですか?
(                             )

Q2とQ3のような質問形式で、純粋想起のアンケートも実施できます。

一方で、助成想起は複数のブランドを提示する調査方法です。以下が助成想起の例になります。

Q.以下の中からご存じの洗剤用品メーカーをお選びください。

花王
ライオン
ロケット石鹼
シャボン玉石けん
P&G

3-2. 純粋想起は助成想起よりも強い記憶を表す

純粋想起で回答したブランドは、助成想起より強く記憶されています。以下の例で純粋想起と助成想起を比較してみましょう。

Q.洗剤用品メーカーを思いつく限りご記入ください。(純粋想起)

 
 
 
 

Q.以下の中からご存じの洗剤用品メーカーをお選びください。(助成想起)

花王
ライオン
ロケット石鹼
シャボン玉石けん
P&G

以上で見たように、純粋想起は助成想起より、回答しにくい調査方法になっています。

そのため、純粋想起では、強い思い入れやこだわりがないブランドを思い出せません。回答の難易度は高いですが、その分回答者に浸透しているブランドを調べることが可能です。

4. 純粋想起・助成想起がブランド認知を測る上で重要な理由

ブランド認知を計り、認知度を向上させていくことは、顧客エンゲージメントの向上やLTV(顧客生涯価値)の向上・他社ブランドとの差別化など、ビジネスをする上で欠かせない価値があります。

その上で、純粋想起・助成想起がブランド認知を測る上で重要な理由として、以下の2点が挙げられます。

  • キャンペーンの成果を把握できる
  • 他社ブランドとの認知度を比較し自社ブランドのポジションが確認できる

以下で2点について見ていきます。

4-1. キャンペーンの成果を把握できる

以下で2点について見ていきます。
純粋想起や助成想起を伴う調査を実施することで、キャンペーンの成果を把握できます。

具体的にはキャンペーン実施前後に同様の調査を実施します。前後にアンケート調査を行うことで、認知度に変化があったかを定量的に測定できるからです。

キャンペーンの成果を把握したい場合は、以下の手順を踏みましょう。

  1. 事前に純粋想起や助成想起の調査を実施
  2. 1の結果を踏まえキャンペーン内容を決める
  3. キャンペーンを実施
  4. キャンペーン後、ブランド認知度アンケートを再度実施

純粋想起や助成想起を活用し、キャンペーン効果を客観的に把握しましょう。

4-2. 他社ブランドとの認知度を比較できる

純粋想起・助成想起を活用することで、他社ブランドとの認知度を比較できます。
ブランドとの認知度の比較結果は、マーケティングを考える上で有益な情報になります。

純粋想起から他社ブランドを含めた認知度の比較をする場合は、以下のように複数の記入欄を設定しましょう。

Q1.パソコンメーカーを思いつく限りご記入ください。

 
 
 

純粋想起は「第一想起」「第二想起」「第三想起」など、思い起こす順番が早いほど回答者の記憶に残っていることを示唆します。

Q1.パソコンメーカーを思いつく限りご記入ください。

NEC
東芝
富士通
(回答者が記入後の状態)

上記の場合は、一番上の「NEC」が最も認知されているパソコンメーカーであることを意味します。

また、助成想起を実施することで、他社と比較した時の自社ブランドの認知度を知ることが出来ます。以下はその一例です。

Q.以下の中から知っているスナック菓子のメーカーをお選びください。

カルビー〇
森永製菓〇
江崎グリコ〇
明治ホールディングス〇
ブルボン〇
自社
(回答者が記入後の状態)

上記の助成想起を調べるアンケートにおいて自社以外が選ばれた場合、自社の認知度が相対的に低いと考えられます。

一方で、回答者が自社も含めて回答した場合は、大手スナック菓子メーカーと同等の認知度があることを示唆しています。

5. 純粋想起と助成想起はどちらが良いか

純粋想起と助成想起はここまで見てきた通り、目的や調査対象などによって、どちらを選んだほうが良いかは異なります。

また、両者を組み合わせて分析することで、ブランドの認知度や印象、覚えられている状況をより正確に把握することができるという点で、両方をうまく使い分けることもできるでしょう。

自社にとって最適な調査方法を検討した上で実施し、自社ブランドの認知度合いを適切に把握しましょう。

以下では、調査対象に応じて向いている調査方法を示します。

5-1. 高級品の認知度調査なら「純粋想起」

高級品の認知度調査は、純粋想起を活用するのに向いているでしょう。高級品はブランドへのこだわりや良いイメージを持たれることが、消費者の購買に繋がっていることが多いからです。

純粋想起をもとにブランドがどれくらい想起されるかを現状把握することが、ブランドイメージ形成における出発地点と言えるでしょう。

5-2. 日用品の認知度調査なら「助成想起」

日用品の認知度調査なら「助成想起」を活用するのに向いているでしょう。

日用品や生活雑貨などの低価格な商品は他社と比較しつつ購入される傾向にあり、助成想起される状況に近いからです。

例えば、洗剤用品に関しては先ほど述べたようなメーカーが存在しますが、これらのメーカーの洗剤用品は一般的にスーパーで販売されており、同じ場所に陳列されていることが多いです。

消費者はこれらの商品を比較検討し、自分に合った洗剤用品を購入するため、助成想起で自社ブランドが選ばれれば、このような状況下でも購入してもらえると推測できるでしょう。

6. まとめ

今回は、純粋想起や助成想起の意味やそれぞれの違い、認知度調査が重要な理由、活用方法などについて解説しました。

純粋想起や助成想起の用語の意味を知ることで、自社ブランドにあった認知度を把握できます。

また、高級品の認知度調査なら「純粋想起」、日用品の認知度調査なら「助成想起」を実施し商品やブランドによって使い分ける必要があります。

純粋想起や助成想起を理解した上で、認知度調査を適切に行い自社ブランドのマーケティング活動に役立てましょう。