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ファンマーケティングとは?メリットや成功事例、実践のコツまで解説
企業のマーケティング手法の中で、昨今注目を集めているのが「ファンマーケティング」です。
SNSの発達などをはじめとして企業と顧客がつながりやすくなっています。それと同時に接触方法が多様化しており、従来のマス層に対するアプローチがうまくいくとは限りません。
そんな状況下で自社製品やサービスに愛着を持つ「ファン」を生み出し育成できる企業は、売上を伸ばしながら費用を削減することで成長し続けることが出来るでしょう。
この記事ではファンマーケティングについて知りたい方に向けて、ファンマーケティングとは何か、そのメリットや成功事例、実際に行う上で重要なポイントなどを解説していきます。
目次
- ■ファンマーケティングとは?
- ■ファンマーケティングが注目される理由
- ■ファンマーケティングに取り組むメリット
- ■ファンマーケティングの成功事例
- ■ファンマーケティングを成功させるコツ
- ■まとめ:ファンマーケティングはこれからの時代に欠かせないマーケ手法のひとつ
■ファンマーケティングとは?
ファンマーケティングとは何かを知るために、ファンの定義も含めて説明します。
●ファンとは
ファンマーケティングの前提となる「ファン」とは、企業のブランドや製品・サービスなどに対して、強い興味関心を持っている人のことを指します。
熱狂的なファンは対象への愛着があり、関連情報を求め、リピート購入やイベント参加など積極的に活動します。同時に、ファン自らが口コミなどを通じて積極的に宣伝や推薦を行い、それらの人気や売上に貢献します。
●ファンマーケティングとは
「ファンマーケティング」とは、ファンを生み出し、育成することで、中長期的な売上を伸ばすことを目的とするマーケティング手法のことです。
ファンマーケティングでは、そのブランドや製品、サービスなどに対して愛着心を持っているファンや、潜在的にファンになりそうなユーザーをターゲットにします。そして彼らに対して特別なサービスやキャンペーン、情報などを提供していきます。
具体的なファンマーケティング施策の例としては以下になります。
・SNS上で口コミなどのUGC(ユーザー生成コンテンツ) や拡散が生まれるキャンペーンの実施
・ファンミーティングなど、企業やユーザー同士が直接コミュニケーションできるイベントの開催
・YouTube などの動画配信プラットフォーム上でユーザーと直接やり取りできるライブ配信
こうしたファンマーケティング施策を行うことにより、ユーザーに対する訴求力を高め、ファンを生み出し育成します。
■ファンマーケティングが注目される理由
ファンマーケティングが注目される大きな理由として、社会やヒトの急速な変化が挙げられます。具体的に何が起きているのかを見ていきます。
●日本の人口減少・少子高齢化
日本は現在人口が減少しており、少子高齢化や独身増加も進んでいます。
その結果、マーケティングの対象となる日本人自体が減っており、新規顧客の獲得競争が激化しコストも増えたため、取り組む難易度が上がっています。
しかし、既存顧客に「ファン」になってもらえば、そこからリピートで売上を増やしたり、広告費をかけずに宣伝してもらうことも可能なため、そのようなマーケティング手法に注目が集まっています。
●ユーザーのコミュニケーション感覚の多様化
冒頭でもお伝えした通り、SNSなどのコミュニケーションツールが発達した結果、 ユーザーの年代性別や属性毎に多種多様なアプローチが必要になってきます。
また同じユーザーであっても目的によってツールを使い分けていたりするため、画一的なアプローチだけでは、 費用に見合った効果を出す事は難しいです。
一方、多様なユーザーを理解しそれに合わせて適切にコミュニケーションが取れれば、ユーザーがファンになります。その結果、自社製品を繰り返し購入したり、ユーザー自らSNSで宣伝してくれるため、お金をかけずに売上を伸ばすことができます。
そのため、ファンマーケティングを重視する企業が増えているのです。
●世の中に情報が溢れすぎている
現在多くの製品・サービスにおいてマーケティングが行われ、ユーザーにとっては情報過多となり対象を選びにくい状況が起きています。
そんな環境の中、ユーザーの情報取捨選択能力も高まっているため、企業側の論理だけで製品サービスを押し売りしようとしても選ばれにくくなっています。
そこでユーザー目線をベースとした本当に必要とされるためのファンマーケティングという手法が注目されています。
●他マーケティング手法の成熟化
ユーザーへの接触アプローチが多様化するのと同時に、多額を投じてでもマーケティングに力を入れる企業が増えています。例えばリスティング広告や SEO対策などのWebマーケティングを行う企業は年々増加しており競争が激化しています。
リスティング広告では、広告を出したい企業がどんどん増えているため、ユーザーが広告をクリックした時に払うクリック単価が上がる傾向にあります。
SEO対策においても、広告費はかからないものの、検索順位の改善・維持にかかるコストは年々増えている傾向にあり、難易度は増しています。その結果、顧客獲得単価が上昇し 企業の収益は下がってしまうのです。
このような状況を受け、比較的コストのかかりにくいSNS などを活用したファンマーケティングが注目されています。
■ファンマーケティングに取り組むメリット
企業にとって、ファンマーケティングを行うことは具体的にどんなメリットがあるのでしょうか? メリットを確認した上で、ファンマーケティングに取り組むかを検討してください。
●ユーザー理解が深まる
ファンマーケティングを行うことで、ユーザーとの接点が増えニーズが把握しやすくなります。
例えば、ファンであればアンケートやインタビューにも応じてもらいやすいでしょう。そうした場でどのような製品やサービスが求められているのかについて本音を聞き出すことが可能です。
既存の製品・サービスで叶えられていないニーズが発掘出来れば新製品を開発することも出来るでしょう。
他にもファンミーティングを開催し、ファンと直接対面して率直な感想を聞けば、ファンの満足度を高めながらも貴重なフィードバックの機会が得られます。
●売上を安定させられる
ユーザーが自社製品やサービスに愛着を持ちファンになると、売上の安定につながります。
ファンの愛着が高まれば、競合と比較されやすい値段や品質などの機能的価値ではなく、感情的な情緒的価値が高まり選ばれ続けられるようになるからです。それは、ファンが売上の安定をもたらす長期顧客になることを意味します。
また、一般に企業売上の大きな割合を上位少数の熱狂的なファンが生んでいるとも言われます。そのファンを大事にすることは彼らのさらなるリピートを生み、将来に渡って安定的な売上に貢献してくれるでしょう。
参考:購入金額だけで「顧客を格付け」する愚行 本当に大切にすべきは「熱狂する顧客」
●広告費用の削減ができる
ファンマーケティングを通じてファンを獲得し、リピートの売上をあげることが出来れば、従来新規顧客の獲得に払っていた広告費がかかりません。新規顧客を獲得しなくても売上をあげることが出来るからです。
また、愛着を持ったユーザーが家族や友人に製品・サービスを紹介したり、SNSや口コミ投稿を通じて宣伝してくれる可能性もあります。結果として、広告費のさらなる削減になります。
さらに、ユーザーからの口コミは実体験に基づいており信頼されやすいため宣伝効果も高いです。
■ファンマーケティングの成功事例
ファンマーケティングは注目されている手法であり、実施している企業は沢山あります。今回は、その中の成功事例を3つご紹介します。
●ソニー
ソニーのデジタル一眼カメラ「α」では商品購入後を一番重視しています。
具体的には、購入者に3か月3回以上コンタクトする顧客施策「P3」を CRM アクションとして実行し、購入した商品を使いこなすためのサービスを提供しています。
例えばP3では、初心者から上級者まで対応した多様なコンテンツをメール配信し Web サイトへ誘導していますが、 一般的なメルマガが1.3%の誘引率なのに対し、 P 3メールでは32%を叩き出しています。
その結果、ファンが購入後に使った金額は購入時点を1とすると、 P 3施策の段階で3.85まで高まっています。
その他、既存顧客同士のコミュニケーションが行える写真投稿サイト「α Cafe」まで誘引すると5.24、リアルな体験会まで参加したユーザーは5.34まであげることに成功しています。
参考:ソニーのデジタル一眼カメラ「α」に学ぶ、なぜ購入後のマーケティングを重視すべきか
●丸亀製麺
うどん専門の飲食チェーンである丸亀製麺では、ユーザーと直接やり取りができるツイッターやInstagramを活用しています。ツイッターのフォロワー数は100万を超え、SNS上でユーザーとの直接的なやり取りが生まれる「500円引クーポン」などのキャンペーンを積極的に実施しています。
また、ユーザーが撮った丸亀製麺の写真投稿をリツイートしたり、DMでのやり取りが生まれることで、ユーザーの愛着を生み出しています。その結果、リピート来店やファンによる自発的な投稿につながっています。
また、2019年には「ごはんですよ!」でお馴染みの桃屋とコラボレーションし、プロモーション前にファンミーティングを開催しています。丸亀製麺のうどんと桃屋のトッピングを活用したレシピを熱く議論するなど、ファンと直接交流をする機会を作っています。
参考:丸亀製麺が「ごはんですよ!」でお馴染みの桃屋と初のコラボレーション!桃屋のトッピングで自分だけの“神盛り”を楽しもう!#丸亀の桃屋トッピング祭 2月25日より開催
●スノーピーク
キャンプ用品メーカーのスノーピークは、新たなキャンプスタイルを提案し、それを実現する製品を販売しています。そして「スノーピーカー」と呼ばれる熱狂的なファンを抱えています。
こうしたファンを生み出す秘訣の一つに「スノーピークウェイ」というキャンプイベントがあります。これは、スノーピークの従業員と既存顧客が一緒にキャンプを楽しむイベントで、全国各地で開催されています。
このような場で、直接ユーザーから製品のフィードバックをもらいながら、同時にブランドの世界観を伝えています。また、ファン同士の繋がりも生み出し、スノーピークの製品と共にキャンプへ行く機会を新たに生み出し続けています。
■ファンマーケティングを成功させるコツ
ファンマーケティングを成功させるには、以下のようなコツがあります。コツを抑えることで、実施するファンマーケティングの成功確率を高め、売上につなげることが出来ます。
●ターゲットになるファンを定義する
マーケティングの対象となる「ファン」は、企業の製品・サービスなどによってそれぞれ異なります。
そこで、ユーザーの中から売上だけでなく顧客ロイヤリティも含めて定義するのが重要です。
例えば、一回の売上が大きかったとしてもそれ以降購入されていないユーザーの場合、ファンにはならない可能性もあります。一回買ったものの、それが不満でリピートに至らなかった場合も考えられるからです。
そのため、定量的な評価となる売上金額だけでなく、SNSでのポジティブな発言や、レビューでの高評価といった定性的な顧客ロイヤリティも踏まえ総合的に判断するのが良いでしょう。
●ファンのニーズを理解する
ファンの定義が出来たら、そのファンが求めているものを理解しましょう。具体的には、顧客満足度調査やインタビュー、モニター募集などの方法が挙げられます。
他にも、ファンマーケティングとして取り組むSNS上での活動を通じて、ユーザーの生の声を知ることもできるでしょう。
一人ひとりのファンのリアルな声を把握することで、数字上で見えてこなかった課題が見つかるかもしれません。
また、新たなニーズが見つかることで新製品に繋がることもあります。ニーズを把握した上ですばやく施策に落とし込めば、顧客満足度の向上にもつながりファン化が促進されるでしょう。
●ユーザーとの接点を整理し最適化する
顧客との接触回数を増やすことが出来れば、データを元にどのようにアプローチするのが最適かを把握することが出来ます。
そこで現在ユーザーとどのような接点があるかを改めて整理した上で、どの接点で交流を計るのが最適かを考えましょう。
コロナ禍以降、直接接点を持つのが難しくなったためにオンライン上での接点が重要視されています。その中でもユーザーと直接つながれるSNSを活用出来ればファンマーケティングにおいて大きな強みになるでしょう。
一方、オフライン上のやり取りでは、人と人との直接的なやり取りが生まれるため愛着が生まれやすい側面もあります。よって、それぞれの利点を踏まえた上でファンマーケティングに取り組みましょう。
●ファンとのコミュニケーションを大切にする
ファンマーケティングにおいて、ファンと密に関わり関係性を深めていくことが大切です。具体的には、情報発信に留まらず、双方向性のあるコミュニケーションを行いましょう。
SNSでユーザーの投稿にリアクションをしたり、ファンミーティングを開催しファン同士のつながりを生んだり、直接対面でやり取りすること等を通じて密なコミュニケーションを行いましょう。
親しみを感じてもらうことで、他社との差別化につながります。
●ファンの心に残る感動・体験を作る
ファンにとって、心に残る感動や体験をもたらした製品・サービスはかけがえのないものになります。それは他の製品・サービスに変えられない価値をもたらし、ファンをコアファンに変え、LTV(生涯顧客価値)を高め続けてくれるでしょう。
それには、ユーザーの声を聞き、フィードバックを受けながら製品・サービスに反映させる必要があります。ファンとの交流の中でそれが生まれることもあるでしょう。長期的な取り組みとなり難易度は高いですが、取り組む価値があります。
■まとめ:ファンマーケティングはこれからの時代に欠かせないマーケ手法のひとつ
今回の記事では、ファンマーケティングの定義をはじめとして、注目される理由からメリットや成功事例、成功させるコツに至るまで解説しました。
ファンマーケティングは、短期的には成果が出しづらく、中長期で取り組むことで成果が出る手法です。
しかし、ファンマーケティングに成功すれば、安定的な売上をもたらし、広告費用の削減効果をもたらします。今後変化の激しい時代においても効果の高いマーケティング手法であり続けるでしょう。
実施するメリットや成功事例を把握した上で、腰を据えて取り組まれてください。