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リテンションマーケティングとは?データを用いた既存顧客との関係維持

デジタルマーケティング
2023.03.22

事業の成長において、新規顧客の獲得と共に重要なのが、既存顧客の維持です。既存顧客と友好な関係を維持する「リテンションマーケティング」の手法について、メリットや成功のポイントについて詳しく解説します。

  • はじめに
  • はじめに

    リテンションマーケティングは、顧客の離脱を防ぎ、継続して商品やサービスを利用・再購入してもらう為のマーケティング活動を指します。リテンション(retention)は日本語で「維持・保持」という意味で、既存の顧客との良好な関係を維持することが顧客のロイヤリティ(信頼、愛着)を高め、企業に長期的な収益をもたらすと考えられています。

    株式会社東通メディアが2022年、EC企業を対象に行った調査*1によると、回答者の78.5%が「新規顧客の獲得が難しくなった」と答え、33.3%が「既存LTV(顧客生涯価値)の最大化に注力したい」と答えました。既存顧客がもつ価値の最大化が事業の継続に欠かせないと考える企業が多いことが分かります。

    この記事では「リテンションマーケティング」について、その重要性と成功するためのポイントについて解説します。

    *1株式会社東通メディア発表『「CRM」に関する意識調査』

    リテンションマーケティングがなぜ重要なのか

    マーケティング施策は主に「新規顧客の開拓」と「既存顧客の維持」の2つに分けられます。どちらがより必要であるかは、その事業や製品のライフステージによって大きく変わります。

    一般的に、事業や製品にはライフサイクル(成長曲線)が存在すると言われています。

    導入期〜成長期は顧客が少なく、製品も認知されていない為、企業は顧客の開拓へ注力する必要があります。しかし、事業や市場が成熟し、ある一定の規模になると、新しい顧客を増やすことが難しくなってゆきます。そこで、既存顧客に継続や再購入を促し、顧客一人ひとりから得られる収益を高める施策が必要になるのです。

    リテンションマーケティングのメリット

    リテンションマーケティングのメリットとしては、主に以下の点が挙げられます。

    ● 新規顧客の獲得より費用対効果が高い
    ● 事業に安定した収益をもたらす
    ● 顧客サービス向上のヒントが得られる
    ● 新規顧客の獲得にもつながる

    それぞれどのような理由があるのか、この項で解説いたします。

    新規顧客の獲得より費用対効果が高い

    一般的に、新しい顧客を獲得するのは、既存の顧客を維持するよりも約5倍のコストがかかると言われています(1:5の法則)。一方で、商品やサービスを購入したことのある既存顧客は、企業やブランドの価値を理解しており、認知の為に多くの予算を割く必要がありません。ある調査*2では、顧客維持率を5%上げると、利益が25%から95%増加することが示されました。

    *2 Harvard Business School Working Knowledge『The Economics of E-Loyalty』

    また、経済学者ヴィルフレド・パレートが提唱した「パレートの法則(80:20の法則)」では、全顧客の2割が売り上げの8割を生み出している、とされています。2割の顧客を差別化してサービスを提供することで、8割の売上を維持し、高い費用対効果を得られるのです。

    事業に安定した収益をもたらす

    1人の顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益を「顧客生涯価値(LTV:Life Time Value、またはCLV:Customer Lifetime Value)」と呼びます。

    初回購入者はリピート購入の確立が低く離脱率も高くなりますが、購入頻度が増加するにつれて、離脱の確立は下がり、購入確率が上がります。また、商品を何度も購入する人は、初回購入者と比べて関連する商品の購入(クロスセル)やより高額な商品へ切り替える(アップセル)可能性も高くなります。

    獲得した顧客に継続して商品・サービスを利用してもらうことで、顧客一人ひとりの生涯価値が高まり、企業は中長期的で安定した収益を維持することができます。

    顧客サービス向上のヒントが得られる

    休眠顧客や離脱した顧客に対しアプローチをかけることもリテンションマーケティングの一つです。

    購入をやめてしまった理由を知り、顧客が離れる前にサービスの問題を改善することは、離脱率を下げるだけではありません。例えば「期待した効果が得られなかった」や「問い合わせに時間がかかる」など、顧客が購入の継続にかかるストレスを取り除くことで、顧客から信頼され、その顧客を優良顧客へ転換させることも可能になります。

    顧客から製品やサービスに対する要望・懸念点を聞き取ることで、製品の改善や新しいサービスの開発に活用することもできます。

    新規顧客の獲得にもつながる

    ブランドや企業を信頼し、愛着を持ってくれる顧客のことを「ロイヤルカスタマー」と呼びます。リテンションマーケティングは顧客の中からロイヤルカスタマーを見つけ出し、育成するために用いられます。

    ロイヤルカスタマーは商品・サービスを継続して購入するだけでなく、友人や家族に薦めたり、インターネットの口コミで商品の良さを広めたりする役割も担ってくれます。商品購入にあたってレビューサイトや口コミの評価が重視される近年、企業が宣伝コストをかけることなく新たな顧客を獲得する重要な手立てとなっています。

    リテンションマーケティングを成功させる4つのポイントと代表的な手法

    顧客のロイヤリティを高め、維持するにはどのような方法があるのか、リテンションマーケティングを成功させるために重要なポイントと代表的な手法についてご説明します。

    顧客視点でデータを収集・分析し、顧客を深く理解する

    何よりもまず、自社の顧客について深く理解をすることが大切です。その為に、顧客に関わるあらゆるデータを顧客視点で収集・分析し、顧客をプロファイリングすることが必要となります。

    ● 顧客の好みや行動スタイル
    ● 製品・サービスの利用状況
    ● 顧客が製品やブランドのどこに価値を感じ、何を期待しているのか
    ● 顧客のライフサイクルのどの時点で、自社の製品やサービスを求めるのか
    ● 優良顧客となってくれる顧客にはどんな特徴があるのか
    ● 離脱した顧客にはどんな特徴があるのか、どこにストレスを感じていたのか

    データは新たに収集するものもありますが、自社の中に既に蓄積されているデータを掘り下げることでも得られます。組織全体でデータを活用し、顧客の将来性を予測することで、リテンションが必要な顧客とそうでない顧客を見極めることが可能になります。

    データ分析に基づき、顧客一人ひとりに沿ったアプローチをする

    様々な切り口で顧客を分析・セグメント化し、ターゲットそれぞれに合わせたアプローチを行います。商品購入後のサンクスメールやフォローアップメール、新商品のリリース情報、イベントの案内など、顧客データを分析して得られるインサイトに基づいて提供します。

    アプローチの方法には以下のものが挙げられます。

    ● メールマーケティング
    ● Webサイトのマイページやレコメンド機能
    ● SNS
    ● プッシュ通知

    重要なのは顧客が求めている情報を、顧客にとって最適なタイミングで届けることです。顧客の購買パターンやアプローチへの反応を測定・数値化し、より効果的な戦略を組み立てることが求められます。

    マルチチャネルによるカスタマーサポート

    顧客が製品やサービスを購入した後、疑問や不安に感じることが少しでもあれば、それを解決する様々な手段を提供することも大切です。電話や窓口でスタッフが応対する有人サポート以外にも、チャットボットのような自動応対で24時間サポートしたり、顧客自身が自力で解決できるようFAQコンテンツを充実させたりすることなどが有用です。顧客が自分の好きな時間、好きなチャネルでサポートを受けられること、組織で分断されることの無い迅速で一貫した対応が顧客満足度を高め、より良い関係の構築に繋がります。

    カスタマーサポートの例には以下のものがあります。

    ● FAQやナレッジがまとまったヘルプページ
    ● ユーザー同士が助け合うコミュニティサイト
    ● SNSやチャットによるコミュニケーション
    ● 電話によるサポート

    また、顧客をサポートすることによって得られる製品・サービスのフィードバックは、離脱の要因を特定し、顧客を引き留める施策にも役立ちます。

    顧客体験を高めるロイヤルティプログラム

    ポイントプログラムや会員限定のセールなど、顧客が「特別感」を味わえるような特典を提供することも大切です。自社の製品やサービスを継続して購入してもらう「ロイヤルティプログラム」は、リテンションマーケティングで用いられる手法の一つです。

    商品の購入回数や金額、継続期間に応じて提供される「質の高い顧客体験」により、顧客がブランドや商品に愛着を持ち、競合他社へ離脱する事なく長期的な関係を維持することができます。ロイヤルティプログラムには、例えば下記のような手法があります。

    ● ポイントプログラム
    ● 会員ランク
    ● 特典サービス
    ● 会員限定のコンテンツやリリース情報

    リテンションマーケティングで重要なCRMとは

    顧客に関する情報を一元管理し、販売やマーケティング活動を最適化する為に有用なのが「CRM(Customer Relationship Management)」です。 CRMは「顧客関係管理」とも呼ばれ、企業が顧客とのやり取りをデータで管理する手法で、顧客との関係構築や維持の為に利用されています。

    CRMはWebサイトや電話、メール、チャットなど、顧客と繋がる様々なチャネルからデータを収集し、顧客の個人情報、購入履歴、スタッフの対応履歴などを元に顧客を分析し、将来の収益性を予測したり、新たなマーケティング施策の立案に役立てられたりします。

    まとめ

    この記事では、リテンションマーケティングについて、その重要性とメリット、成功させるためのポイントについて解説しました。

    企業が利益を最大化し、長期的な成長を続けるには、既存顧客との有益な関係維持は欠かせません。顧客一人ひとりの視点に立ったマーケティングの実践が、これからの企業には求められています。