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カスタマーサクセスとは?定義やカスタマーサポートとの違いなど解説
目次
- カスタマーサクセスとは
- カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
- カスタマーサクセスが注目される理由
- カスタマーサクセスを導入するメリット
- カスタマーサクセスで見るべき主なKGI・KPI
- カスタマーサクセスの仕事内容とは
- まとめ
近年、多くの企業で注目されているカスタマーサクセスですが、深く理解している人は少ないのが現状です。
そもそもカスタマーサクセスとは何なのでしょうか?導入する目的や仕事内容は?
本記事では、少しでもカスタマーサクセスについて理解を深めてもらうために、定義やカスタマーサポートとの違い、メリット、具体的な仕事内容など、カスタマーサクセスについてわかりやすく解説していきたいと思います。
カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセスとは、直訳すると「顧客の成功」という意味になります。
商品やサービスを購入した顧客に対して、能動的に関わることで、顧客が期待している成果(成功体験)につなげる取り組みのことです。
どんなに良い商品やサービスでも、顧客が期待していた効果が得られなければ、満足してもらえず、その後のリピートにはつながりません。
インターネットが普及したことで、顧客は簡単に情報を得られるようになり、他社サービスへの乗り換えも容易です。
そのため、顧客に商品やサービスを使い続けてもらうためには、受動的な対応ではなく、能動的に関わっていくことにより、顧客の課題解決を支援することが重要になります。
顧客の要望を元にサービスを改善するだけでなく、課題解決に向けて先回りして改善を行うなど、積極的に行動してカスタマーサクセスを目指しましょう。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
カスタマーサクセスと混同されやすい言葉として、カスタマーサポートがあります。
それぞれ名前は似ていますが、取り組みの姿勢が大きな違いです。
能動的に行動して顧客を成功に導くカスタマーサクセスに対して、カスタマーサポートは、クレーム対応や問い合わせ対応のように受動的な業務を行います。
カスタマーサクセスは、サブスクリプション型のような商品だとイメージしやすいと思いますが、顧客にサービスを継続してもらえなければ売上にはつながりません。つまり、解約防止や顧客満足度を上げるために、能動的に顧客とコミュニケーションを取り、顧客のビジネスの成功に向けてサポートしていく必要があります。
カスタマーサポートは、コールセンターのように顧客側からクレームや問い合わせがあり、それに対応する業務となります。こちらも顧客満足度を上げるためではありますが、対応スピードが求められます。
カスタマーサクセスが注目される理由
カスタマーサクセスが注目されるようになった理由としては、SaaS(Software as a Service)の普及やビジネス面の変化による影響が大きいです。
近年のビジネスでは、売り切り型の商品ではなく、サブスクリプション型のビジネスモデルが主流となっており、企業も顧客への対応方法が変化しました。売り切り型の商品では、一度売ったら終わりなので、営業は売ることが目標となり、商品が売れた後のお問い合わせやクレーム処理はカスタマーサポートが対応します。
しかし、サブスクリプション型の商品では、継続して商品を利用してもらうことが目的とな
るため、利用者に解約したいと思われないよう事前に改善を行ったり、顧客に対して商品やサービスの使い方などを説明したりするなど、購入後のサポートが求められます。
また、グローバル化により似た商品やサービスが多くなり、他社との差別化が難しくなっています。
そのため、近年はカスタマーサクセスで顧客にアプローチして、安心感を与えることにより、他社と差別化するマーケティング戦略が注目されているのです。
カスタマーサクセスを導入するメリット
カスタマーサクセスを導入することで得られるメリットを3つご紹介します。
- 顧客ロイヤルティを高めて解約率(チャーンレート)を低減できる
- LTV(顧客生涯価値)が向上できる
- 顧客から商品・サービス改善の意見が得られる
顧客ロイヤルティを高めて解約率(チャーンレート)を低減できる
顧客ロイヤルティとは、直訳すれば「顧客の忠誠心」という意味で、顧客が企業や商品・サービスに対して愛着を感じたり、ファンになるということです。
ロイヤルティの高い顧客を「ロイヤルカスタマー」と呼び、ロイヤルカスタマーは利用頻度や利用単価が高くなる傾向があります。
カスタマーサクセスにおいて重要な目的は、「自社の商品・サービスを継続して利用してもらう」ことです。
つまり、顧客ロイヤルティを高めることで、リピーターを増やし、解約率を低減することができるのです。
LTV(顧客生涯価値)が向上できる
LTV(Life Time Value)とは、顧客が特定の期間において、商品やサービスを購入する金額の合計を表す指標のことです。
継続して自社商品・サービスを利用する顧客ほど、LTVが向上します。
リピーターが増えれば増えるほど、継続的に安定した利益が確保できますし、カスタマーサクセスを導入することは、費用対効果の高い収益基盤を構築することにつながります。
顧客から商品・サービス改善の意見が得られる
カスタマーサクセスでは、顧客が商品・サービスを購入した後もコミュニケーションを取ります。
そのため、定期的に顧客にヒアリングすることで、顧客がいま抱えている不満や改善点などを拾い上げることが可能です。
信頼関係を構築できれば、積極的にサービス向上の意見を提供してもらえるなど、商品・サービスの改善に大きく役立ちます。
企業側からだけでなく、顧客からもお互いにコミュニケーションが取れるのは、カスタマーサクセスの大きなメリットと言えるでしょう。
カスタマーサクセスで見るべき主なKGI・KPI
KGI(Key Goal Indicator)とは、最終的な目標を定量的に評価する指標のことです。
KPI(Key Performance Indicator)とは、目標を達成するプロセスにおいて、定期的に進捗状況を計測するための指標のことです。
達成度合いを定点観測することで、目標に向かってズレが生じていないか、どのプロセスで問題が発生しているかなどを把握することができます。
組織全体のパフォーマンス向上につながるため、KGI・KPIは必ず設定しておきましょう。
カスタマーサクセス導入において、見るべきKGI・KPIをまとめてみました。
LTV(顧客生涯価値)
LTVは、カスタマーサクセス導入のメリットでも先述しましたが、顧客が生涯にわたり自社にもたらす利益のことです。
継続して取引を行ってくれる顧客ほどLTVは高くなります。
近年、新規顧客の獲得が難しくなっており、既存顧客からの収益を最大化させることに注目が集まっています。
そのため、既存顧客への取り組みの成果が大きく反映されるLTVは重要視されており、カスタマーサクセスのKGIとして設定されることが多い指標です。
LTVの計算式は、扱う商材やビジネスモデルによっても変わっていきますが、基本的な計算式をいくつかご紹介します。
LTV = 平均顧客単価 ÷ 解約率
LTV = 平均購入単価 × 平均購入頻度 × 平均継続契約期間
LTV = 年間取引額 × 収益率 × 継続年数
解約率(チャーンレート)
解約率(チャーンレート)とは、契約している顧客がサービスを解約する割合のことです。
カスタマーサクセスにおいて安定して収益を上げるには、顧客に継続して商品やサービスを利用してもらう必要があります。
つまり、いかに解約率を抑えることができるかが重要です。
KGIに設定したLTVを分解すると、LTVを向上させるには解約率が直接関係してきます。
そのため、解約率をカスタマーサクセスのKPIとして設定することが多いです。
特にサブスクリプション型のビジネスモデルでは、解約率が重要とされています。
サブスクリプション型のビジネスモデルの場合、新規顧客の売上に加えて、契約を継続してくれる既存顧客の売上も収益として加算されていきます。
つまり、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客を増やしていき、顧客単価が上がるほど全体の売上が上がる仕組みです。
そのため、既存顧客を増やすために、解約率を抑える必要があります。
解約率は、以下の計算式で求めることができます。
解約率 = 解約数 ÷ 総契約数 × 100
オンボーディング完了率
オンボーディングとは、顧客が自社のサービスを契約してから、理解して運用が定着するまでの期間のことです。
つまり、オンボーディングが完了しているということは、サービスを理解して目的に沿って運用できている状態のため、解約リスクが低くなります。
オンボーディングの例としては、サービス導入後のチュートリアルがあげられます。
初期設定が完了した後、一定期間内にチュートリアルが全部終わっているか、途中で停滞していないかがチェックポイントとなります。
長期間オンボーディングが完了していないということは、サービスが必要されておらず、必要と思われていても理解するのが難しい状態のため、不要なコストとして解約されてしまう恐れがあります。
そのため、カスタマーサクセスでは、顧客の意欲が高い購入直後から積極的にサポートを行い、オンボーディング完了まで進める必要があるのです。
オンボーディング完了率も、解約率に影響を及ぼすため、カスタマーサクセスのKPIとして設定されることが多いです。
オンボーディング完了率は、以下の計算式で求めることができます。
オンボーディング完了率 = 期間内にオンボーディングが完了した顧客数 ÷ オンボーディング期間内の全顧客数
アップセル率・クロスセル率
自社が提供しているサービスに複数のプランがある場合や複数のサービスを提供している場合、アップセル率・クロスセル率をKPIに設定することがあります。
アップセルとは、現在のプランよりも高いプランを利用してもらうことで、顧客単価を向上させる方法です。
クロスセルとは、現在契約しているサービスに加えて、関連性の高いような別サービスを契約してもらうことで、顧客単価を向上させる方法です。
つまり、アップセル率・クロスセル率を向上させることで、顧客単価を上げることができるため、LTV向上につながります。
ただし、顧客単価が上がるからといって、闇雲にアップセル・クロスセルを行ってしまうと、解約率の増加につながるため、カスタマーサクセスでは、顧客の求めている場合のみ提案を行うことが重要です。
アップセル率・クロスセル率は、以下の計算式で求めることができます。
アップセル率 = アップセルした顧客数 ÷ 全体の顧客数
クロスセル率 = クロスセルした顧客数 ÷ 全体の顧客数
NPS(Net Promoter Score)
NPS(Net Promoter Score)とは、顧客が商品・サービスに対して、どのくらい愛着や信頼度があるかを数値化する指標のことです。
つまり、顧客ロイヤルティを計測することができます。
NPSが高い状態というのは、サービスへの満足度が高く、継続してくれる可能性が高くなります。
逆に、NPSが低い状態というのは、何かしらの不満を抱えている顧客が多い可能性があるため、積極的にサポートやヒアリングを行う必要があります。
しっかり不満をヒアリングすることができれば、サービス向上につながる改善点の発見や解約を防止することでき、全体の売上向上につなげることができるのです。
計測方法としては、アンケートなどで、「商品・サービスを知人に勧めたいか?」といった質問に対して、0~10点で評価してもらいます。
アンケートの結果を元に、0〜6点は「批判者」、7〜8点は「中立者」、9〜10点は「推奨者」のように顧客を分類し、それぞれの割合を算出することで顧客ロイヤルティを求めることができます。
NPSは、以下の計算式で求めることができます。
NPS = 推奨者の割合 - 批判者の割合
カスタマーサクセスの仕事内容とは
カスタマーサクセスの最大の目的は、顧客にサービスを継続して利用してもらうことです。
ここでは、顧客の継続率を高めるために、カスタマーサクセスが行う仕事内容を説明していきたいと思います。
カスタマーサクセスの仕事内容は以下の4つです。
- オンボーディングのサポート
- アダプションによるサービス定着化
- エクスパンションで顧客単価を上げる
- フィードバックで顧客満足度を向上
それぞれの役割について見ていきましょう。
オンボーディングのサポート
オンボーディングとは、KGI・KPIのところで先述しましたが、顧客が自社のサービスを契約してから、理解して運用が定着するまでの期間のことを指します。
自社サービスを契約してもらった後、運用を定着させるためにサポートをするのがカスタマーサクセスの仕事です。
例として、以下のようなサポートを行います。
- 利用方法の説明
- 理解を深めるための定期的なフォロー
- 勉強会開催
サービスを開始し始めた時期は、顧客の意欲が一番高い状態ではありますが、利用方法が理解できず解約につながる可能性が高い時期でもあります。
顧客がサービスの理解を深めるために、利用方法の説明や勉強会を実施することで、顧客満足度が上がりサービス継続につながります。
アダプションによるサービス定着化
アダプションとは、オンボーディングで導入後に理解が深まった顧客に対して、本格的にサービスを定着させるために行う業務になります。
定期的に顧客にヒアリングを行い、自社サービスの活躍度を調査したり、顧客の成功に向けて新たな活用方法を提案したりするなど、サービスの継続や定着化を目的とします。
エクスパンションで顧客単価を上げる
エクスパンションとは、拡張という意味で、自社サービスの拡大に向けて行う業務です。
契約更新やアップセル・クロスセルにより、顧客単価を上げることを目的とします。
エクスパンションを行う状態というのは、顧客にとってサービスが定着し、ロイヤルティが高い状態であるため、アップセル・クロスセルの成功率が高まります。
顧客のゴールをしっかり理解していることが大前提ではありますが、アップセル・クロスセルによって顧客の成功につながるのであれば、積極的に提案していきましょう。
フィードバックで顧客満足度を向上
フィードバックでは、サービスを継続して利用してもらうために、新機能の追加やサービスの改善を行います。
顧客が不満に思っていることや要望があれば、改善を行うことで顧客満足度の向上につなげることができます。
ただ、何でも改善すれば良いというわけではなく、多くの顧客から同様の意見が上がっていたり、他社サービスと差別化ができたりなど、改善することで顧客満足度の向上や売上アップにつながる施策であれば積極的に改善していきましょう。
まとめ
この記事では、よく混同されるカスタマーサポートとの違いやメリット、仕事内容など、カスタマーサクセスの基本についてご紹介しました。
安定した収益を得るためには、新規顧客の獲得だけでなく、リピーターを増やすことがとても重要です。
そのためには、顧客が期待している成果を達成する必要があります。
カスタマーサクセスで顧客に対して能動的に関わっていき、顧客の成功だけでなく、自社の成功を目指していきましょう。